骨粗鬆症と胸腰椎移行部圧迫骨折

人体のあらゆる箇所に通っている神経。その神経が何らかの原因で圧迫されると痛みが走り、日常動作に支障をきたします。今回は背部痛を訴えてこられた方のお話です。

 

胸腰椎移行部圧迫骨折とは?

背中の痛みを訴えて来院された72才の女性。実は2年前にベッドから起き上がる時に痛みが走り、寝起きが自由にできない。トイレ、炊事などもままならず動きがとれなかったそうです。
この方は宝塚在住で近くの病院を転々とされたようですが、原因が解らないまま約1年が経ち、遂に探し当てた当院へ来られました。レントゲン写真で撮影の結果、うつ向き時(前屈時)と体を後ろに反らせた時(後屈時)のレントゲンでは明らかに骨の間の空間量が異なっていました。その箇所はいわゆる偽関節(骨が無くて空洞になっている)で、ぐらぐらしていて動作のたびに周りの神経が圧迫されるのが痛みの原因。それは、「第12胸椎の圧迫骨折」によるものでした。胸腰椎移行部(第11・12胸椎、第1・2腰椎)の圧迫骨折は、高齢者によく起こります。この方の場合も大した外傷はないのですが、やはり加齢とともに骨が薄くなり(骨粗鬆症)、圧迫骨折の結果、偽関節になっていたのです。

 

椎体形成術と椎体間固定術の併用

さて、痛みで寝起き、歩行ができないと必然的に寝たきりになってしまいます。72才ではまだ普通に生活ができる年令なのに、本来有るべき骨が無く空洞化している為に起こる痛み。そこで人工椎体を作る手術を選択。ハイドロキシアパタイト(人工骨)というペースト状の液体に近いものを椎弓根を経由して椎体に注射器で流し込み、骨に近い人工骨を作るという術法です。人工骨は2~3日で固まりますが、手術は10時間近くかかる大手術でした。
術後、3週間の入院を経て、現在は宝塚から通院しておられます。もちろん日常生活には支障ないところまでに回復しておられます。

 

胸腰椎移行部 術前・術後レントゲン写真

shourei-13-01
shourei-13-02

 

医師と患者との信頼感

実はこの患者さんは、以前わたしが手術をした方です。阪神大震災で損傷した腰(腰部脊柱管狭窄症)を、当時勤務していた病院で執刀させていただいた方で、今回の痛みが何処の病院に行っても良くならないので、わたしを必死で探してくださったそうです。
とは言え、ご本人は宝塚在住、整形外科医で谷内という苗字と、大阪で開業しているらしいという僅かな情報が頼り。結局役所の方がインターネットで龍神堂医院を探し当て、今回、宝塚からはるばる港区まで来られたというわけで…。
改めて「患者さんから医師への強い信頼感」の大切さを実感させていただきました。