胸部・腰部の脊柱間狭窄症

体の中心を司る多くの神経は脊柱管内にあり、その脊柱の間が狭くなると神経が圧迫され、痛みと共に歩行困難になります。そして膀胱、直腸にも障害がでることも…。

64才の男性が腰痛と下肢のしびれと歩行障害を訴えて来院。まだまだ働き盛りの男性は、よほど辛かったのでしょう。港区在住でもあり、取りあえずは一人で来院されたのだそうです。

早速MRIで検査の結果「胸部と腰部の脊柱管狭窄症」との診断で、すぐに手術を要する事を患者さんに通告。その時、排尿や排便に異常はないかと尋ねたのですが、「異常なし」とのことでした。その後、患者さんは家族の勧めで他の病院でも診察を受け、やはり手術と言われて結局は当院へ戻られ、初診から1ケ月後に手術を行いました。

 

術法は「椎弓切除術」と「椎体間固定術」と「骨移植術」

手術は胸部1ケ所、腰部3ケ所ですが、先ず胸部から始めました。特にこの部分は、中枢神経が存在する所で慎重を期すからです。まず、圧迫因子を切除し次に、椎体に支柱(材質はチタン)を埋め込んで固定、その後に骨を移植しました。腰部も同様ですが、両方で9時間を超える大手術でした。
入院は3週間、術後4~5日ぐらいから歩き始め、少しずつリハビリテーションを開始、3週間後に笑顔で退院となりました。その後はほぼ毎日元気にリハビリに通院されていました。
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どんな症状も、きちんと伝えることが肝心!

術後に患者さん曰く「手術が済んだら泌尿器科と肛門科へ行こうと思っていた」と。やはり排尿、排便に異常があったらしいのですが、当初、お聞きした際は「異常なし」と言っていたはず…。私は有り得る症状を推察して聞いたのですが、ご本人なりに腰痛と無関係だと考えたのでしょうか…。我々医師ではない一般の方の判断では、例えば残尿感などは、泌尿器科、排便障害は肛門科の領域だと思いがちです。でも人体は全て繋がっているし、おまけに中枢神経が集まる箇所の疾患なので、どこに障害が出てもおかしくないわけで、どんな症状でも医師にきちんと伝える事が肝要です。そしてこの方は泌尿器科も肛門科も無縁となり大喜びでした。