肩が痛い、腕が上がらないと言えば誰もが五十肩かと思いますが、実は骨頭が壊死していた…というお話です。
壊死といえば、故美空ひばりさんの大腿骨骨頭壊死という病気で一般に認知度は高いでしょう。
当時78歳の女性が腰痛と膝痛を訴えて来院。腰は脊柱管狭窄症と診断し、初診翌月に手術を実施。
すると今度は肩が痛くて腕が動かないと訴えられます。肩が痛いと言えば考えられるのが五十肩(肩関節周囲炎)や変形性肩関節症です。
当初はまず投薬、リハビリテーション、関節注射などの理学治療を始めたものの良好な結果は得られませんでした。
検査で原因を…
そこで初診から1年4ヶ月後、MRI、CT、関節造影等で検査をしました。
結果、肩関節の上腕骨骨頭部分の骨が壊れてしまい、関節としての機能不全という状態で、患者さんは腕をすくめたままで動かせなかったわけです。
私の所見は「上腕骨骨頭無腐性壊死」。
手術以外に方法はありません。骨が壊死する原因は、例えば動脈硬化で栄養動脈に血栓ができると、その先へ栄養が届かなくなって細胞が壊死するなどと考えられますが、まだ立証はされていません。
人工骨頭を埋める術法
検査翌月に手術を行いました。この患者さんの場合、肩甲骨側の関節は何とか機能していたので、術式は人工関節ではなく、人工骨頭を埋める手術となりました。
先ずは壊死骨と壊れてあちこちに飛散している骨を取り除き、次に上腕骨の支えの部分に骨セメントを流し込んで人工骨頭を固着する方法で、手術は約4時間に及びました。そして術後3週間は固定せねばならず、もちろん患部を下にして寝る事はできません。
今回の入院は2週間、退院後は腕を上げる事からリハビリが始まりましたが、この患者さんは龍神堂医院の近くに在住だったので通院も楽だったと思われます。
肩は動くようになり、その後はふとんの上げ下ろしや、洗濯の干し物なども問題なくできているそうです。
早期発見、早期治療は大原則
昔から「病気は早めで大袈裟が良い」といわれますが、我慢もほどほどにし、異変を感じたらとにかく専門医に診てもらいましょう。
それが健康維持と安心の早道。早期発見、早期治療は大原則です。「高齢になって手術をしなくても早ければ治療方法があるのだから」と私はいつも言っております。
皆さん、我慢は禁物、まず受診を心掛けてください。
*尚、遠方の患者さんで当院で手術を受けた方には、術法と経過、その後のリハビリ等について資料を添えて申し送りますので、お住まいの近くでのリハビリテーション通院が可能です。