ペースメーカー装着患者さんの手術

1人は81歳男性で、前年頚椎と腰椎の2度の手術を受けられた患者さん。
もう1人は51歳女性で、前年腰椎の手術を受けられた患者さんです。2人とも心臓疾患でペースメーカーを装着した後の手術のためリスクが高く、ご本人達も私達医師側も大変でした。

 

頚部椎間板ヘルニアと腰椎不安定症(81歳男性Tさんの場合)

施術日の2年1ヶ月前、初診で右上肢痛、腰痛、両下肢痛を主訴に来院されました。初診時すでにペースメーカーを挿入後で、他病院で高齢とペースメーカー装着後のリスクを理由に手術は拒否されていました。保存治療で軽快せず、右上肢痛で夜間眠れないため施術日の10ヶ月前、脊髄造影検査及びCTを施行し、施術日の9ヶ月前、頚部椎間板ヘルニアに対し頚椎ヘルニア切除及び椎体前方固定術を施行しました。術後、右上肢痛は軽快したのですが、腰痛及び両下肢痛が軽快しないため、腰椎不安定症に対して施術日、腰椎固定術を施行しました。

 

腰部脊柱管狭窄症(51歳女性Nさんの場合)

施術日の4年6ヶ月前より広範囲脊柱管狭窄症(頚部と腰部)と慢性関節リウマチで当院外来で通院中の患者さんです。リウマチに関してはコントロール良好でしたが、両上肢痛と両下肢しびれ感が強く、施術日の4年5ヶ月前、頚部脊柱管狭窄症に対し、椎弓形成術を施行し、症状軽快しました。施術日の1年5ヶ月前より全身倦怠感が強くなり、(当院から紹介した)他病院で僧帽弁閉鎖不全症と診断され、施術日の7ヶ月前、弁縫縮術及びペースメーカー設置術が行われました。
施術日の1ヶ月前より腰痛、両下肢脱力感、歩行困難が増強したため、腰部脊柱管狭窄症に対し、施術日、椎弓切除及び椎体固定術を施行しました。

 

ペースメーカー装着者の術前・術後の注意点

ペースメーカーを装着している患者さんは、まず検査にMRIを使用できないため、入院での脊髄造影及び脊髄造影後CTを行わなければ患部を描出することができません。次に必ず抗凝固剤を服用されているため、術前後の服用の中止と血栓形成の注意及び術中・術後の出血量への配慮が必要となります。また術中電気メスを使用するため、術前後のペースメーカーの心調律の調整も必要です。最後に、元々心臓の機能が悪くペースメーカーを装着しているため、術後の全身管理など、細心の注意を払い手術に臨まなければなりません。

「手術をするか否かは、自分の今後の人生を考え、家族や周囲に迷惑をかけるかも知れないことを考慮して、本人が判断すべき」と提言します。
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