手根管症候群

「なぜか手の指が痺れる、物が上手く掴めないなど、日常生活に不便を来しながらも我慢してそのままに…。
今回は手根管症候群についてのお話です。

 

手首の神経圧迫によるしびれ

右手の親指、人指し指、中指のしびれを訴えて来院された女性は当時81才。2ヶ月間ぐらいはリハビリテーションを続けるも今一つ効果が現れない。
本人は過去について多くを語らずでしたが、どうやら25年前に左手が同じ症状で手術をされたとか…。その時右手の手術も薦められていたそうですが、そのまま放置して何と25年!不便な状態を我慢していたのは本人なりに思うところがあったのでしょう。

診察してみると指のしびれはもとより、指の対立運動ができず親指と小指が1.5センチ開いてくっつかない状態。更に掌の母指球筋(親指の下の膨らみ)が全く無く、ぺったんこの状態(猿手)。これでは細かい指の作業は出来ないのも当然と言えます。

 

手根靭帯を開き神経の圧迫を緩和

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手首には手根管という所があり、正中神経とたくさんの腱が集まっていて、それらを手根靭帯と屈筋支帯(ベルト状のもの※図1参照)で支えています。その靭帯と支帯が厚くなって圧迫性神経炎を引き起こしているのです。親指、人指し指、中指の知覚は正中神経が司っていて、そこが一番著しい症状となっていたようです。
そこで靭帯を開き、中の神経スペースを広くし、癒着した神経を剥離するという術法を採用。術後はすぐリハビリを開始。というのはリハビリを怠ると癒着がおこりまた元に戻ってしまうからです。
その患者さんは毎日リハビリに励み、遂に3ヶ月くらいするとタオルが絞れるようになり、6ヶ月くらい通院されました。それにしても25年も辛抱するなんて本当に驚きです。 しびれには様々な要因が絡み一概に原因を特定できません。したがって早めに専門医の診察を受けましょう。
早期なら手術以外の選択肢もあるわけで、とにかく自己判断は禁物! そして自分の症状は速やかに医師に告げる事で、より迅速に確実な治療が受けられる事をお忘れなく。

 

内視鏡手術の功罪

近頃、内視鏡手術がマスコミ等でもてはやされ、医療の最先端というイメージが一般的には有ります。小さな穴を開け画面を見ながら患部を切り取る。術後の回復も早く、すぐ退院できるメリットが強調されていますが、果たしてどうなのでしょう。
手根管症候群も内視鏡手術がなされる場合がありますが症例による可否、真に熟練医師でなければ危険を伴う事もあるのです。
内視鏡が患部に到達する迄に、様々な箇所(難所)が有るわけで、そのあたりのフォローがきちんとできる医師は少ないのが現状(現に大病院での内視鏡手術トラブル多発)。
内視鏡は見えない箇所を映し出すので検査には効果大ですが、内視鏡手術はその上に操作を加えるため、症例と医師を選ぶ事が肝要です。
物事には必ずプラス面とマイナス面があるということですね。