広範囲脊柱管狭窄症

今回は「しびれ・歩行障害などは早めの診療を!」というお話です。

 

脊柱管狭窄症とは?

脊髄の中には中枢神経が通っていて知覚・運動など様々な身体機能を司っていますが、その脊髄の通る管腔を脊柱管と呼びます。年齢を重ねるとその脊髄を蔽っている脊椎が変性して不要な軟骨や軟部が出現してきます。すると脊柱管が狭くなり、中にある神経も圧迫され痛みが出るのです。最初は手や足の痛み、軽いしびれ、歩きにくいという症状から、さらに進むと痛くて我慢できない、歩けないという事になって病院に駆け込む方が多いのではないでしょうか。脊椎には頸椎、胸椎、腰椎とがあり、その内の三分の二が原因での障害(頸椎+腰椎など)の場合、広範囲脊柱管狭窄症とよばれ、いわゆる難病指定となります(難病届を出した時点から治療費は無料)。治療としては、初期ならリハビリテーションや治療薬で、重症なら圧迫されている箇所を広げる手術となりますが、手術の場合はもちろん本人・家族が納得の上で行われます。

 

下肢の痛み・Aさんの症状

下肢の痛みで受診されたAさん(男性・当時74歳)は腰椎狭窄が原因でした。
リハビリテーションと治療薬で8ヶ月通院されていましたが、以後通院が途絶えました。そして約2年後に左下肢の痛みがどうしても取れないと再来院。検査の結果、神経の圧迫が強くなっており、筋力も弱っているので手術がベターだと提言しました。
また、Aさんは右利きなのに右手の握力が弱い事や、歩行異常にも疑問を抱き、さらに頸椎も検査。すると頸椎狭窄がかなり進行している事が判明。いわゆる広範囲脊柱管狭窄症と診断したのです。
腰椎と頸椎のどっちの手術を先行するかといえば当然首の方ですね。なぜなら頸椎に通っている神経は脳神経と同種類のもので言わば待った無しの状態。腰椎の神経は末梢神経なので、幾分かは時間的余裕があるため…。頸椎に支障があれば首から下には様々な症状が出るもの。だから先ずは頸椎からという事になりました。昔から脳に近い病気は怖い・重いといわれていますから、首の方が重要だと言う事はみなさんも納得ですよね。

 

頸椎脊柱管拡大術→腰椎脊柱管拡大術

遂にAさんは翌月、まず頸椎脊柱管拡大術を受けてしばらく通院。しかし、元々悪かった腰椎狭窄が原因の下肢の痛みも取るべく、約半年後に腰椎脊柱管拡大術も受けてしばらく通院中されました。その後は独歩が可能なまでに回復されたんですよ。
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初期症状を見逃さずに!

加齢と共にあちこちに支障は出ますが誰でも手術はしたくない筈。だから初期の内に先ず受診して早目に治療する事です。手術をせずに余生を送れる事が望ましいわけですからね。
初期症状として留意する事は、頸椎の場合→手足のしびれ、歩行障害、握力の低下などや功緻運動障害(ボタンの掛け外しがしづらい、お箸が上手く使えないなど)。
腰椎の場合→両下肢にしびれ、運動障害、間欠性跛行(何mか歩くと歩けなくなり、休憩するとまた歩ける状態を繰り返す)などですが、とにかくヘンだなと思えば自分で判断をせずに専門医に診てもらいましょう。転ばぬ先の杖、早目の診療で明るい暮らしをしたいものです。