若い人に多い「椎間板ヘルニア」

椎間板の変性により神経を圧迫

人体には5つの腰椎があり、その中の腰髄は各々役割を担っています。上から順番に腰部、臀部、下肢の運動及び知覚神経を支配していて、椎間板ヘルニアが起こりやすいのは4番目と5番目の間。スポーツ選手によく見られる様に、腰を酷使すると腰椎と腰椎の間でクッション役を果たしている椎間板が変性し、本来の位置から神経の方へ押し出されていくと神経が圧迫され痛みが生じます。椎間板の変性具合や圧迫箇所、レベルにより手術を要する場合もありますが、リハビリテーションと投薬で痛みが和らぎ、何とか持ちこたえていける事も多々あります。椎間板ヘルニアは比較的若い人に多く発症するという事も知っておきましょう。

 

ラブ法による手術の症例

患者さんは、まず腰痛と下肢の痛みを訴えて来院される事がほとんど。必要に応じてレントゲン、MRIで検査し治療を始めます。ヘルニアには「膨隆型」と「脱出型」がありますが、今回のケースは40歳代の女性で、椎間板の中身(髄核)が神経に完全に接触している「脱出型」(図1)で痛みが非常に強く、手術となりました。手術は「ラブ法」(LOVEという医師名から命名)という術法を採用。これは患部の箇所を開いて脱出している部分を切除、次に椎間板の中味(おから状のもの)を3分の2程度取り除き、全容量を少なくする事で神経への影響を無くす方法です。この術法では同箇所に再度症状が出ないという利点から採用しました。入院は3泊4日、術後2~3ヶ月リハビリテーションを続けた女性は、以後支障なく元気に暮らしておられます。
やはり早めに専門医に診てもらい、手術の時期を逸しない事が肝要です。
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レーザー手術の功罪

一方でレーザー手術という術法があり患者さんによっては強く要望される事があります。手術して1日で帰れるので仕事復帰が早いという利点があり、働き盛りの人には魅力的術法。難点は保険適用がなく費用が40~50万円かかる事。「膨隆型」 のヘルニアに限られる事。また再手術の可能性が高い事。更に患部ではなく椎間板内部をレーザーで焼き、内圧を下げる事により症状を軽減するもので、今回のような「脱出型」には禁忌で、へたをすれば神経も焼いてしまう危険を伴います。
今回のような脱出例には、前述の「ラブ法」が望ましいというのが当院の見解です。

 

日常的に腰の筋肉を鍛える

腰痛やヘルニアの予防には日常的に無理なく屈伸運動をして腹筋を鍛えましょう。ヘルニアの診断を受けたら、腰が弱い事を自身が十分認識し、重い物を力まかせに持ち上げたり、少し良くなると怠けたりせず、医師の指導に従ってリハビリテーションを続けること。ヘルニアという持病があっても上手につきあって手術せずに暮らせる事の方が良いですよね。