橈骨遠位端(手関節)粉砕骨折整復のための手術

転んで手をついた際によく起こる関節部の骨折。特に骨粗鬆症の人の場合は、普通なら捻挫で済む程度の衝撃でも骨折してしまいます。今回の患者さんも、骨がジグソーパズルのピースのように薄くバラバラに砕ける「粉砕骨折」を起こしてしまい…。

 

転倒により右手首を骨折

患者さんは71歳の女性で、来院前日に10㎝の段差を踏み外して転倒、その際に右手を強くついてしまったとのこと。検査の結果、右橈骨遠位端(みぎとうこつえんいたん)粉砕骨折と診断しました。橈骨とは前腕部分を支えている2本の骨の1本で、遠位端はその手首側に近い部分。この方は以前から骨粗鬆症と診断されており、10年前にも大腿骨頚部骨折のため他院で人工骨頭置換術を受けていました。

 

創外固定術と骨移植術

骨折によってずれた骨は早急に元の位置に戻す(整復する)必要がありますが、まず骨折の形態によって術式を選ばなければなりません。骨折後、日も経っていない事と、骨折が粉砕型だったため、創外固定術及び人工骨骨移植術を初診日翌日に施行しました。まず粉砕骨折部を透視下良好な位置に徒手整復した後、固定性のない粉砕骨折部を創外固定器(図1)を用いて固定し、ペースト状の人工骨を注入しました。3時間~ほぼ1日で人工骨が固まると、骨折部が安定し、骨癒合がえられるという術式です。この術式は骨折が治癒するまで骨折部上下の骨に金属製のピンを刺入して強固な固定で骨癒合を促す医療機器で、切開部が小さく(4本のピン刺入部の5mm程度)、手術に要する時間も短いというメリットがあります。腕の部分に固定器が露出した状態になりますが、指や腕の動きが阻害されにくく、体の中にピンを入れて固定する術式と比べて、後でピンを抜く手術もグンと簡単になります。この患者さんの手術は局所麻酔を用いて30分程度で終わり、5週間後には固定器を外しました。その後はリハビリテーションのため定期的に通院されました。
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骨粗鬆症と骨折

骨の形成速度と吸収速度のバランスが崩れ、内部がスカスカになってしまう骨粗鬆症。ちょっとした外傷でも骨折しやすくなり、今回の患者さんのように重度の骨折を起こすケースがよく見られます。骨粗鬆症予防のための3大ポイント「食事・運動・日光浴」に留意することはもちろん、自分の骨密度がどの程度のレベルなのか知ることも大切です。特に女性は閉経期の50歳を過ぎたら、ぜひ病院や保健所で骨密度の測定を受けましょう。当院では高性能X線骨密度測定装置を設置していますので、全身のどの箇所でも高精度の測定値を得ることが可能です。「強く丈夫な骨」で、シルバーエイジを健康に過ごしましょう。