ある病院からの紹介状をもって診察に訪れたAさんは車椅子で来院されました。聞けば4ヶ月前に転倒して「膝のお皿」を骨折し、同時に手首も骨折したとのこと。紹介元の病院で膝の手術を受け、手首はギブスで固定。術後はリハビリテーション(以下リハビリ)を行っていたものの、4ヶ月経っても膝が40度迄しか曲がらない状態(正常値は165度)。
したがって立つ、座る等の日常動作が不自由で、特にトイレも戸を開けたままという大変な状態でした。一方、手の方は指が途中までしか曲がらず(指先と手のひらまでの指掌間距離が7cm)「グー」ができない状態。
69歳の女性で料理もトイレもままならずでは相当なストレスだし、家族の負担も大きくなります。
「通常よくある骨折なのに、なぜこういう状態になったのか」と、その病院に問合せると、リハビリの回数が週2~3回と少なく、又、本人が「痛い」といって協力的でないとの回答でした。患者さんとしては元の状態に戻れるのか、諦めねばならないのかという狭間で苦しんでおられたのでしょう。
手及び膝に関節授動手術とその後のリハビリテーション
膝の可動域(曲る角度)を大きくするために関節授動手術を提案させていただき、患者さんも受諾。
そこで関節鏡を使っての手術(写真)となりました。紹介元の病院での前回手術後に毎日リハビリをしなかったために拘縮が強くなり再度手術という結果を招いたと言えます。
なので今回は根気よくリハビリをお勧めしたところ、患者さんも回復の光が見えたと頑張って毎日通院して下さいました。
その後は、ほぼ元に近い状態まで回復し、正座も可能で一人歩行もできるし、台所にも立て、編み物もできるとAさんは大喜びです。
身体は固定したり動かさないと血流が悪くなって硬直するもの、だから毎日のリハビリは欠かさず、最初は痛くても明日を信じて努力を重ねることが大切なのです。
「リハビリは軽く考えたり、医師や療法士に治して貰うものではなく、自分が目標を持ってやる気で続けなければ明日の健康は約束されないという事をぜひ認識してほしい。医師や療法士はその補助的な役割なのです」と声を大にして言いたいですね。
自宅でもできるリハビリですが、一人では挫折しがちです。そんな方は通院して医師や療法士の手を借りて続ける事を心がけましょう。高齢化が進む現代、明日はわが身です。リハビリテーション専門病院が存在するほど、必要かつ重要な療法であることを再認識していただきたいのです。