頸部脊柱管狭窄症-2

首と肩の痛みを訴えて72才の女性が娘さんに付き添われて来院。本人は寡黙な方で、自分で症状を訴える事はほとんどなく、首を前に曲げたままの姿勢で痛みに耐えておられる様子でした…。

診察を始めると、来院の4~5日前から特に強い痛みがあると娘さんが説明。手がしびれるのでボタンもかけにくい、お箸が使いづらいなど日常生活に支障が出て困っているのです。診察中も患者さんは首を前に曲げたままで、後にも左右にも動かないというか、動かせない状態だったようです。MRI、脊髄造影検査の結果、頸椎の2番目から7番目までの脊柱管が狭くなって神経を圧迫している頸部脊柱管狭窄症と診断。狭くなっている箇所は造影剤も見え難い状態で、相当痛い筈だと思いましたね。72才という年令でもあり、痛みから脱するためには手術やむなしという事になりました。

 

術法は椎弓形成術

手術は、まず脊椎の棘突起を取り除き、取り除いた棘突起のまん中に縦に切り込みを入れる。次に椎弓の両端に溝を掘って椎弓を開く。そして開いた骨と骨の間にドーム型の人工骨をスペーサーとして(つっかえ棒のように)入れる手術です。そうして掘った溝の部に骨芽細胞が出て仮骨が出来、6週程で徐々に骨がくっついてきて手術部(頸椎)が安定していきます。椎弓の両端に溝を作るという事は、いわば骨折状態のようにするわけで、時間をかけると骨が成長していく…私たちの体のしくみは実にうまく出来ていて本当に不思議ですね。
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入院は5週間

手術は4~5時間、術後は胴体と首を支える装具(3週間)と首を支える装具(2週間)を装着して固定します。そして胴体装具がはずれる頃から少しずつリハビリテーションを始め、この方は5週間の入院となりました。もちろん痛みは取れて笑顔で退院、その後もリハビリに通院しておられました。

 

医療メモ

脊柱管には多くの中枢神経が通っていて、脳からの指令を受けて神経が働き私たちはスムーズに行動が出来るのです。そして周りに流れる髄液は1日5リットルも循環しています。脊柱管狭窄症になるとその神経が圧迫され、強い痛みでとても日常生活が営めない。そういう重傷の患者さんが、多く来院されます。手術は体全体を司る神経を損傷しない様に執刀しなければならず、そういう手術が出来る医師は少ないのが現状だと思います。
当医院が大病院と異なる点は、執刀した院長が継続して診察するという事が、患者さんにはとても安心なようです。尚、院長は年間30~40例の脊椎手術を行っております。