日常生活に支障「頸部脊柱管狭窄症」

身体に異常を感じても「そのうちに治る」と思ってあまり気に止めず、つい日常生活を優先しがち。
しかし症状が長引く時は要注意!今回は年齢的にはまれな症例を紹介しましょう。

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原因は頸部、手足にしびれや痛み

当医院を訪れたのは47歳の女性。9ヶ月前頃から足(足首から指先)にしびれが、さらにその半年後位から前腕から指先にかけて痛みが生じ、日常生活が困難となり来院。それまで他の医院で診てもらっていたそうですが、当初、足のしびれは腰が原因とされていました。しかし腕から指先の痛みが連続的に起こるようになり、困り果てて当院の診察を受けに来られたのです。
さっそくレントゲン、MRI、脊髄造影、CTなどで検査の結果、「頸部脊柱管狭窄症」と診断。
頸椎の神経を囲む箇所(脊柱管)が部分的に狭く、神経が圧迫されるために痛みやしびれが出るのですが、このような狭窄症は70歳代の方に多く、今回のように47歳という若い方では珍しいことです。
首には何の自覚症状もなく年齢的にも若い事から本人も受け入れ難かったようですね。
しかし握力は右手8.5kg、左手10.5kgだったので(通常値は女性で25kg前後)、洗濯ばさみが使えないということからも生活上の不便さはおおむね想像できるでしょう。

 

椎弓形成術を施術

この方の場合、頸椎の3~7番目の脊柱管が生まれつき通常より狭く、神経も変性していたので、狭くなっている箇所を広げる手術を提案。最初は難色を示しておられましたが、以後の長い人生を考えて、遂に手術を決断。来院1ヶ月後に、「椎弓形成術」を行いました。狭くなっている箇所の骨を開き、人工骨を埋めて脊柱管を広げることで神経を保護するものです。
骨は時間と共に再生されますが、いったん損傷した神経は部分的に元には戻らないので神経保護が最優先となります。しびれ、痛みは術後、ほぼ解消しました。
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2週間の入院

入院は2週間。術後1週間は装具をつけて安静に、2週目からリハビリを開始し2週間後に無事退院となりました(大病院の場合は検査段階から入院を要するので入院期間はもっと長い)。
その後は週3回ほど通院してリハビリを続け、握力も右21.5kg、左24kgまで回復。ほぼ普通の日常生活が営めるようになられました。
当院は入院施設もあり、診察・手術の執刀・術後も一貫して院長(わたし)が診させていただいておりますので、患者さんやご家族から「安心で心強い」と評価を頂戴しています。
家族や知人に歩き方がヘンだと言われたり、しびれや痛みが続く時は念のため診察を受け、大事に至らないように自分で心がける事が大切ですね。