脊髄空洞症

車椅子で受診された80代の女性は「膝・股関節が痛い、以前に骨折も…」と言う。聞けば身長155cm、体重80kgで寝返りも出来ない状態。体重の関係で足への負担はあるとしても寝返りが出来ない事に疑問を抱いた。
早速MRIで検査。結果は「脊髄空洞症」。
脊髄の中に空洞が出来て水が溜まる病気で40代~50代の人に多く溜まった水が脊髄を圧迫し、麻痺が進行する病気。
その方は或る総合病院を受診したが高齢なためリスクが高いので、手術は見送るとの事。早い話が「歳だから」と言われたとか。
脊髄空洞症は判明すれば即手術というのが常識で、その病院は空洞症に対する認識が低いのか、それとも手術が出来なかったのかわからないが、どちらにしても手術可能な他の病院を紹介すべきで、高齢を理由に曖昧なことで片付けるのは疑問ですね。病名が判らないはずは無いのですから…。

 

手術とリスク

脊髄に溜まった水が原因で寝返り出来ず、放置すれば悪化を辿る。手術がベターとはいえ、当然ながらリスクを伴う。脊髄内に溜まった水と脊髄液との間に、管を通して水を出すという手術(下図参照)で、多少の脊髄損傷は覚悟を要する。
ここからが患者と家族の選択となる。手術の場合、脊髄にメスを入れるため感覚の鈍る箇所がでるというリスクがあり、一方、現状のままでは寝たきりの方向へいく。
「どちらを選びますか?」と伺ったところ、家族会議が始まり、食事・排泄がままならない現状を踏まえ、2ヶ月後に遂に手術となった。
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勇断と家族の支え

以前の本人・家族の生活は大変だったはずです。お孫さんや家族全員でおばあちゃんを支えていたらしく「寝たきりなのに床ずれが出来ていないから感心」と思いました。平穏な暮らしが出来るようにと手術を選択した勇断!そして手術はもちろん成功!
現在、その患者さんはつたい歩きができるようになり「家族と一緒に食事が出来るのがとても嬉しい」と晴れやかな表情で語って下さいました。